池永征司(家暖リフォーム/株式会社コンクレタス 代表取締役社長)
コンクリート製品の開発と販売を手がけ、UA値0.19のコンクリート製の超高断熱住宅を開発しました。その経験をもとに、大分で家を壊さない断熱リフォームを始めました。記事は、現場で見てきたことと、国や研究機関の資料をもとに書いています。
冬、暖房をつけても家がなかなか暖まらない。気流止めは床下から入れられると聞いたが、壁の上は止めなくていいのだろうか。
結論:平屋は下だけでも上下に近い。2階建ては天井断熱と一緒に上も止める
気流止めは、壁の中を通る冷たい空気の道をふさぐ詰め物です。上下とは、壁の下(床下の側)と壁の上(天井裏の側)のことです。
- 床下から壁の下をふさぐと、床下の冷たい空気の、壁の中への入口が狭まります
- 平屋なら、下だけでも、上下に入れたのに近い効果が出る試算があります
- 2階建ては、下だけだと効果が小さくなります。天井断熱(天井の上に断熱材を吹き込む工事)と一緒に、天井裏から壁の上側もふさぐほうが効きます(試算)
- 家暖リフォームの床暖プラン(床下の断熱と気流止め。床暖房ではありません)は、床下から1階の壁の下側をふさぎます。床天井断熱プランとフルセットプランは、下側に加えて、可能な家では上側もふさぎます
この違いは、北海道の研究所が札幌と東京の気候で計算した結果です。比べたのは、1年間に暖房と冷房に使う熱の量です。電気代が同じ割合で減るとは限りません。
試算は、壁の中のすき間を目標どおりに小さくできた場合の値です。大分の家や、家暖リフォームの工事の数字ではありません。国の省エネ基準の地域の区分で見ると、札幌より東京のほうが大分に近くなります。
床下や天井裏に入れるかは、現地調査で確かめます。現地調査には、必ず専門の職人が伺います。

床下から壁の下をふさぐと、冷たい空気の入口が狭まる
古い木造の家では、壁の中の空洞が、床下と天井裏につながっていることがあります。基礎の換気口から床下に入った外の空気は、床と壁の境目のすき間から壁の中に入ります。壁の中を上がって、天井裏へ抜けます。
国の手引きは、部屋と部屋のあいだの壁(間仕切り壁)の中が、床下から天井裏まで「煙突状態」になると書いています。冷たい空気は、外壁と間仕切り壁の両方を通ります。
床下から気流止めを入れるのは、この通り道の入口、壁の下側です。ふさいだあとも、すき間は少し残ります。気流止めのしくみは「気流止めとは?」に書きました。

セーターで言えば、壁の下は裾、壁の上は襟です。冷たい風は、裾から入って襟から抜けます。床下からの気流止めは、裾を絞るのと同じです。

平屋なら、下だけでも上下とほぼ同じだけ減る
北海道の研究所は、昭和50〜60年代ごろ(1970年代後半〜1980年代)の木造の家で計算しています。札幌の気候で、平屋(約24坪)の1年間に暖房と冷房に使う熱の量を、改修前の家と比べました。
壁の下だけでも、上下に入れたのと同じくらい、およそ半分に減りました。改修前との差には、換気扇による換気など、気流止めのほかの条件の違いも入っています。下だけと上下を比べると、ほとんど差がありません。
東京の気候で、気流止めだけを変えた平屋の計算でも、下だけでおよそ30%減り、上下とほぼ同じでした。

図4 平屋の試算(北海道の研究所。札幌と東京の気候)
2階建ては、1階の下だけだと減り方が小さい
札幌の気候の試算では、2階建ての1階の壁の下だけだと、1年間に暖房と冷房に使う熱はおよそ10%減りました。すべての壁の上下では49%減です。試算の家は、2階が1階より小さい2階建て(約30坪)です。
「すべての壁の上下」には、1階と2階のあいだも入ります。家暖リフォームの工事では、1階と2階のあいだには手を付けません。どちらも改修前の家と比べた値で、改修後の家は換気扇による換気なども変えてあります。
1階の壁の下だけをふさいだ家では、2階の壁は上も下も開いたままです。2階建ては、天井断熱と一緒に壁の上もふさぐと、減り方が大きくなります。

図5 2階建ての試算(北海道の研究所。札幌の気候)
2階建ての試算では、床側と天井側の両方で3割程度減る
研究所は、すべての壁の上下に入れなくて済む手軽な方法も、計算しています。2階建てで、床下から1階の壁の下を、天井裏から2階の壁の上を止めます。1階と2階のあいだは止めません。
東京の気候で、床と天井に断熱材が無い2階建てに、気流止めと断熱を足して計算しました。1年間に暖房と冷房に使う熱は、次の割合で減りました。
- 天井側だけ(2階の壁の上と、天井の断熱):1割に届かない
- 床側だけ(1階の壁の下と、床の断熱):およそ1割
- 床側と天井側の両方:3割程度
足した断熱材は、綿のような断熱材(グラスウール)で、床が32K 8cm、天井が吹き込みの18K 30cmです。
研究所は、すべての壁の上下より効果は小さいが、手軽な方法として選べる、と書いています。札幌の試算(床の断熱は今のまま)では、両方で3割程度、すべての壁の上下で49%減でした。
家暖リフォームの床天井断熱プランも、床と天井の断熱に、床側と(可能な家では)天井側の気流止めを組み合わせる工事です。ただ、気流止めの止め方も、断熱材も、気候も家も、試算とは違います。3割程度という数字は、そのまま当てはまりません。天井は標準で23cm(試算は30cm)で、国が新築に示す天井の断熱の目安を上回ります。
壁の上に手が届くかは、天井裏に入って確かめます。現地調査には、必ず専門の職人が伺います。

図6 気流止めと断熱を足した試算(北海道の研究所。東京の気候の2階建て。図5とは元の家の条件が違う計算)
国の評価の案では、上下がいちばん、下だけが次
国土交通省の検討会は、今ある家の断熱を評価する方法の修正案を出しました。断熱材が入った外壁の熱の通しやすさ(U値)に、気流止めの入れ方で決まる係数を掛けて評価します。
- 上下の両方に入れた壁:1.0
- 下だけの壁:1.2
- 上だけの壁:1.3
係数が小さいほど、熱を通しにくい壁と評価されます。下だけでも気流止めとして数えますが、上下の両方より低く評価する案です。評価に使う係数で、実際に逃げた熱を測った値ではありません。

図7 外壁の評価に使う係数(国土交通省の検討会の資料。修正案の値)
床下と天井裏からでは止めきれない所が2つ。壁の中の湿気にも気をつける
1つ目は、2階建ての1階と2階のあいだ(1階の壁の上と、2階の壁の下)です。家暖リフォームは、ここには手を付けません。研究所の提案でも、必ず入れる所には含まれていません。1階と2階のあいだの外壁に入れれば、暖房と冷房に使う熱がさらに減るので望ましい、と研究所は書いています。
2つ目は、床下から詰めたときに残るすき間です。研究所が実物大の壁で試すと、床下から詰めた気流止めでは、空気が目標ほどは止まりませんでした。床の下の木(根太・大引)や、壁の中の細い柱(間柱)が邪魔になり、壁の中まで入りきらなかったためです。
それでも、残ったすき間は、研究所が気流止めの無い壁に見込んだすき間より、ずっと小さく収まりました。床下からでも、壁の中への入口は大きく狭まります。ただ、空気が目標どおりには止まらないぶん、試算より効果が小さくなることがあります。
研究所は、壁の下は、壁の内装などを一部はずして入れる方法を提案しています。床下から入れる方法でどこまで止まるかは、「気流止めは後からでも入れられる?」に書きました。
もう1つは、壁の中の湿気です。研究所は、防湿や気密が十分でない壁に気流止めだけをすると、外壁の中で結露するおそれが増すことがある、と書いています。壁の中の湿気が抜けにくくなるためです。床側だけ・天井側だけに気流止めをした計算でも、結露しやすくなりました。床側と天井側の両方では、片側だけより抑えられました。
結露のしやすさは、壁の造りや床下の湿気で変わります。床下や天井裏の状態は、現地調査で調べます。

家暖リフォームでできること
家暖リフォームの気流止めは、壁をはがさずに入れます。
- 床暖プラン:床下点検口(床にある、はずせるふた)から床下に入り、1階の外壁と間仕切り壁の下側をふさぎます。床板の下には、8cmの断熱材(高性能グラスウール)を入れます
- 床天井断熱プラン:床暖プランの工事に、天井断熱を足します。綿のような断熱材(グラスウール)を、標準で23cmの厚さに吹き込みます。可能な家では、天井裏から壁の上側もふさぎます
- フルセットプラン:床天井断熱プランの工事に、内窓を足します
家暖リフォームは壁をはがさず床下から入れるので、止まり方は、壁をはがして入れる方法より弱い可能性があります。そのかわり、壁も床も壊さず、住みながら工事できます。床下からどこまで詰められるかは、現地調査で確かめます。
研究所の試算(すき間を目標どおりに小さくできた場合)では、平屋は下だけでも上下に近い効果でした。2階建てで上側もふさぐなら、床天井断熱プランかフルセットプランです(可能な家で)。
詰め物はグラスウールで、断熱材と同じ1年保証の対象です。工事はほとんどの家で数日で、住みながらできます。それぞれ経験豊かな専門業者とタッグを組み、信頼性の高い工事を行っています。料金の目安はプラン・料金案内に載せています。

よくある質問
2階建てです。床暖プランの気流止めだけでは、意味がありませんか?
意味はあります。研究所が、東京の気候で、床と天井に断熱材が無い2階建てを計算しています。1階の壁の下の気流止めと床の断熱で、暖房と冷房に使う熱がおよそ1割減りました。
天井側も足すと、3割程度減りました。可能な家なら、床天井断熱プランやフルセットプランで、天井裏から壁の上側もふさぎます。床の冷たさについては「床下断熱の効果は?」に書きました。
床暖プランのあとから、壁の上側を足せますか?
可能な家なら足せます。天井断熱を頼むときに、天井裏から壁の上側もふさぎます。天井断熱だけの工事も請けています。金額は、現地調査のあとの見積りでお伝えします。
相談するとき
現地調査には、必ず専門の職人が伺います。入れる家は床下・天井裏に入り、入れない家は見える範囲で、今の断熱の状況を調べます。床下や天井裏に入るふた(点検口)を、新しく作ることもできます(費用がかかります)。時間は1〜2時間ほどです。
現地調査とお見積りは無料です。金額を見てから、断ることもできます。内窓以外の工事は、日程によりますが、現地調査から工事に入るまで1か月以内が目安です。
電話では「現地調査をお願いします」と伝えるだけでかまいません。受付は、基本的に平日です。
電話:0120-1181-46(フリーダイヤル)
お問い合わせ:お問い合わせフォーム
この記事の出典
- 北海道立総合研究機構 北方建築総合研究所「調査研究報告 No.380 既存木造住宅の熱・湿気性能評価と断熱改修手法の構築に関する研究」(2017年3月) https://www.hro.or.jp/upload/23011/380.pdf
- 本文の「北海道の研究所」「研究所」は、この報告。暖冷房負荷の数字はすべて計算で、1年間の暖冷房負荷を、改修前の家と比べた割合。「およそ」「1割に届かない」は図から読んだ値。ページは PDF の通し番号
- 同じ報告の p.36(試算の家。平屋80㎡、2階建て100㎡(2階は40㎡)、1970年代後半〜1980年代の在来木造)
- 同じ報告の p.66〜68(東京の平屋。外壁と天井にグラスウール10K 50mm。換気の条件はそのままで、気流止めだけを変えた計算)
- 同じ報告の p.78〜81(札幌の平屋と2階建て。2階建ては1階の壁の下だけでおよそ10%減、上下すべてで49%減)
- p.78〜81 は、改修前は換気が漏気だけ、改修後は第3種換気0.5回/hも加えた計算。図5(p.78〜81)と図6(p.110〜115)は、元の家の断熱材と、改修後の換気が違う計算
- 同じ報告の p.110・p.111・p.114〜115(床側と天井側の方法。札幌・東京とも3割程度減。東京は床にグラスウール32K 80mm、天井に吹き込みグラスウール18K 300mm(p.111 の表5-2))
- 同じ報告の p.116(まとめ。防湿気密が不十分な壁に気流止めだけをすると外壁の内部結露のリスクが増す可能性)
- 同じ報告の p.110・p.114(床側だけ・天井側だけの計算で、結露の発生リスクが高くなった)
- 同じ報告の p.118(気流止めを入れる所の提案)・p.119(壁の下は、内装材などを撤去して入れる施工方法の提案)
- 同じ報告の p.24〜25・p.31(床下から壁の下に入れる実験。すき間は壁1mあたり1.21〜2.13cm²。目標の1cm²以下に届かなかった)
- 同じ報告の p.52〜53(計算の条件。気流止めの無い壁のすき間を、壁1mあたり500cm²と見込んだ)
- 国土交通省「温熱環境(省エネ)に係る評価方法基準案の検討」資料2-2(第2回検討会資料)PDF p.5(修正案。断熱材が施工された外壁のU値に乗ずる係数。上下1.0、下のみ1.2、上のみ1.3) https://www.mlit.go.jp/common/001088412.pdf
- 一般社団法人 木を活かす建築推進協議会「住宅省エネルギー技術講習テキスト 設計・施工編―全国(4〜7地域)版―」(令和2年度 国土交通省補助事業、令和3年3月)第2版、紙面p.49 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/r2text_zenkoku.pdf
- 本文の「国の手引き」は、このテキスト
- 木を活かす建築推進協議会「建築物省エネ法 木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック2022 省エネ基準編 4〜7地域版」(国土交通省 編集協力)PDF p.13(新築の天井の熱抵抗は4.0以上) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/guidebook_4-7.pdf
- 家暖リフォームの天井の23cmは、マグ・イゾベール「マグブローライト」の熱伝導率0.052からの計算で、熱抵抗およそ4.4 https://www.isover.co.jp/products/mag-blow-light
- 国土交通省「地域区分新旧表」(令和2年7月時点、告示第265号 別表第10 抄)改正後の欄:札幌市2地域、東京23区6地域、大分市7地域(旧野津原町は6地域) https://www.mlit.go.jp/common/001500182.pdf

